夫の一番にはなれない
唇が触れるかという、その瞬間――
『午後6時30分になりました。校内に残っている生徒は速やかに下校してください』
無機質な校内放送が、ふたりの空気を切り裂いた。
來はわたしを見つめたまま、ふっとため息をついて、保健室を出て行った。
目を合わせることもなく。
「……っ」
ほんの一瞬、唇が触れたような、触れていないような――
心臓の鼓動がまだ治まらない。
「わたし、來のこと……」
もう自分の気持ちに嘘はつけなかった。
この感情は、恋だった。
たしかに、來に恋をしている。
そして、來も……ほんの少しでも、わたしに向けた感情があったなら。
願わくば、この気持ちが報われてほしいと、心の奥で強く願ってしまった。