兄妹 ~禁断の恋が動き出す運命の一夜~
「気分は?」
視線の向こうにいたその人は、ほかの誰でもない。
蓮人だ。

私が生死の境をさまよった時、蓮人は切羽詰まった悲しそうな顔をして、私を安心させようと無理して笑ってた。

あの頃の蓮人の表情を鮮明に今でも覚えている。

今は少しだけ顔のしわが深くなって、前よりも引き締まった表情に月日の流れを感じる。

「優莉・・・?」
私が何も返事を返さないことに不安になったのだろう。
蓮人は私のそばに更に自分の顔を近付けて、私の様子を覗き込む。
「・・・」
声を出そうとした瞬間、私は一気に意識がはっきりとしてきて、状況がつかめた。
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