白い結婚なので離縁を決意したら、夫との溺愛生活に突入していました。いつから夫の最愛の人になったのかわかりません!

初めての夫婦の晩餐には、夫の視線が突き刺さる

「ディアナ。支度はどうだ?」
「はい……できました」

フィルベルド様から贈られたドレスを着て、髪飾りが入っていそうな置いてある贈り物を開けると、ドレスに合わせたようなバラの髪飾りが出てきた。
それを着けて、迎えに来てくれたフィルベルド様を迎えた。

「お待たせしましたか?」
「……いや……ディアナ……本当に綺麗になった」

私のドレス姿を見て、フィルベルド様は息を飲み愛おしそうな様子になる。
この様子に、困惑しっぱなしだった。

時折、頭の上から視線を感じながら歩き、宿の中にあるレストランに到着した。
フィルベルド様は、夕食にこの宿のレストランの個室を予約しており、2人でゆっくりと摂れるようにしている。
ワインも食事に合うようにと、ペアリングで出されて食事一つ一つとワインが合う。

フィルベルド様と初めての晩餐。
フィルベルド様と2人での食事に緊張する私と違い、彼は晩餐を楽しんでいるように表情が優しい。
夫と生まれて初めての晩餐が、離縁を考えている妻だとは……余計に目の前の視線が痛い。

「ディアナ。凄く綺麗だ。君と2人で晩餐なんて夢のようだ」
「そ、そうですか……あの、ドレスは、フィルベルド様がお選びになってくださったのですか?」
「隣国から帰る時に、ディアナへの土産をどうしても自分で選びたくて買ったんだ。初めて会った時にバラに夢中になっていたから、好きなのかと……違ったか? お父上からの報告書にも、花やハーブをよく鑑賞していたと書いてあったのだが……」

その報告書は、是非とも確認したい。一体お父様は、なにをしていたんだろうか。

「バラは好きです……ハーブとかも、良く見ていましたけど……フィルベルド様のお邸のバラが今まで見た中で一番綺麗でした……」

そう言うと、少し嬉しそうに微笑むフィルベルド様。

「そうか……新しい邸にはディアナのために庭園を造ろう。君の好きなバラやハーブを植えるのはどうだ? アクスウィス公爵邸のバラを植えてもいい。明日からは休暇になったから、2人で新しい邸を探さないか?」
「あ、新しい邸?」
「新しい邸はいるだろう。しばらくは宿でもかまわないが、早くディアナと暮らしたい」

そう言って、ワインを美味しそうに飲んでいる。

離縁を考えている妻に新しい邸はいらないと思う。庭園なんか勿論いらない。
そう言いたいけど、目の前には次の料理が運ばれてくる。給仕をしているボーイがいるところで、離縁の話なんかできない。
メインには、美味しそうな魚料理……それに合うワインが注がれる。

「……魚が好きなのも、書いてありました?」
「書いてあったぞ。今も間違いないだろうか? お茶も好きと書いてあったが、なんの茶葉かは細かく書いてなかったから、教えてほしい。明日は一緒にお茶も飲みに行こう。明日が楽しみだ」

愛おしそうに私を終始見つめる夫フィルベルド様。それに戸惑う妻に、温度差はあると思うが、そんなこともわからなくなるほど、フィルベルド様の様子は妻にベタ惚れのように見える。だからといって、デレデレしているような視線ではない。
引き締まった顔なのは変わらないのだ。

晩餐が終われば、部屋に帰るが終始優しいフィルベルド様に戸惑う。
それに、今夜はどうするのかが気になり落ち着かない。夫婦なのだから、同じ部屋でも問題はないけど、私たちは違う。

紙切れ一枚の結婚の私とフィルベルド様にそういう関係は無いのだ。
いきなり夫婦の夜を求められても、私にはどうしていいのかわからない。
そして、部屋の前に着くと、2人の足が止まった。

「……あの……フィルベルド様……」

動悸を抑えながら、今夜はお断りしようと話そうとした。
すると、フィルベルド様の手が伸びて私の頬に軽く唇が触れる。
頬にキスされるだけで、私の顔は真っ赤に茹で上がった。心臓は、バクバクと動悸が混乱している。

「フィ、フィルベルド様……っ」
「本当に可愛い……」
「わ、私っ……まだ……」
「ずっと離れていたからな……無理にはしない。今夜も、部屋は別に取っている。隣の部屋にいるから、なにかあればすぐに来てくれ」

初めて頬にキスされただけで、挙動不審になりそうな時に、部屋は別という言葉で自分を必死で抑えた。
別の部屋で、ちょっとホッとしているのだ。

「だが、その可愛い顔は誰にも見せないで欲しい。俺だけのものだ」

両手で頬を支えられたまま、赤ら顔で必死になり首をブンブンと振った。

「また朝も迎えに来る……おやすみ、ディアナ」
「お、お、おやすみなさい……!」

慌てる私が部屋に入るのを確認するかのように、落ち着いているフィルベルド様はドアの前にずっといた。








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