秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
 翌朝。六時に起床してコーディネートを悩み抜いた結果、ネイビーのレースワンピースに白いカーディガンという一番自分らしいファッションを選んだ。
「変じゃないかな? 若作りとか逆に老けて見えるとか、大丈夫?」
 仕事のない日は朝寝坊が常なのに、今朝は清香のために早起きして部屋に来てくれた茉莉に全身のチェックをお願いする。
「うん、完璧! レースって清楚だけどエロさもあるし。なにより、清香に似合ってる」

 センスのいい彼女に太鼓判を押してもらえると、ほっとする。
「超盛りブラもいい仕事してるよ」
 イヒヒと小学生の男の子みたいに、茉莉は笑う。昨日、表参道からわざわざ新宿に移動してまで手に入れたのだ。セクシーな赤や黒には抵抗があって、結局色は薄いブルーにしたけれど、この下着のおかげで今日の清香の胸元はいつもよりボリューミーだ。

 茉莉は人さし指を突きつけて、びしりと言う。
「わかってるわね? ディナーで帰ってきちゃダメよ。お高い、素敵な下着は男に見せるためにあるんだからね」
「う……が、頑張ってみる」
 とはいえ、こちらがいくら望んでも相手が同じ気持ちになってくれるかはわからない。清香の弱気を見透かすように茉莉は語気を強める。
「大丈夫だって。午前のこんな早い時間に待ち合わせなんて、脈ありに決まってるもの」
 茉莉に背中を押されて、家を出た。ドアの閉まるその瞬間に、茉莉がぽつりとこぼした言葉は清香の耳には届かない。
「けど、脈ありだと……かえってつらくなっちゃうか」
< 28 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop