秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
 碧美島は瀬戸内海に浮かぶ離島だ。西欧風の美しい街並みとアートが売りで、リゾート地としての人気も高い。空港もあるし、離島にしては東京からのアクセスもいい。
 島内にはたくさんの美術館があり、貴重なコレクションも多いのだ。

 中学生の頃だっただろうか、祖父と一緒に一度だけ訪れたことがあった。再訪したいという思いはあったが、なかなかチャンスがないままだった。
 信号で車が停車すると、彼は首を振って清香を見る。
「どう?」
「行きたいです!」
 きっぱりと答えていた。彼と碧美島で過ごせるなんて本当に夢のようだ。ひと晩をともに過ごすのか、とかそんな問題は些細なことに思えるほどに。

「大好きです、碧美島。ずっと、もう一度行きたいなと思っていて」
 清香の興奮した様子に、彼は優しく目を細める。
「喜んでもらえてよかった」
(私が喜びそうなこと……そんなふうに考えてくれたんだ)

 一方的に頼み込んだデートなのに、彼の気遣いがうれしかった。
「ありがとうございます。私、デートプランなんてなにも考えていなくて」
 恥ずかしそうな笑みを浮かべた清香の手を彼はそっと握った。
「デート、なんだろ? なら、君の笑顔のために頭を悩ますのは俺の仕事だ」
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