秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
尾野美術館に会いに行くべきかどうか、かなり悩んだ。見合いなんてやめてくれと告げてみようかとも思ったが、彼女の思いつめた表情からそんなに簡単な問題ではないことも予想がついた。
結局、なんの覚悟もないままに、再会の瞬間を迎えてしまった。
昴の兄であることを告げたときの、彼女の凍りついた顔。
『ほら、見ろ。やっぱり傷つけた』
過去の自分の声が、聞こえてくるようだった。
義兄妹になるかもしれない相手との一夜。
志弦の欲望のために、清香にまでその罪を背負わせてしまったのだ。
もし、あの夜、彼女の告白を聞いていたら……。
話の流れで清香の縁談相手が誰か、わかったかもしれない。そうすれば、自分たちは関係を持つこともなかったはず。
(だが、それでも……)
もし過去に戻れたとしても……志弦はやっぱり彼女の話を聞くことを拒むだろう。清香が欲しくて、たまらないから。
(勝手で最低な男だ。どう考えても君にはふさわしくない)
***
大手町。高層ビルの立ち並ぶこのエリアに『大河内ホールディングス』もオフィスを構えている。現在の志弦はここの経営統括室に所属している。
時刻は午後三時。午前で終わるはずだった打ち合わせが異常に長引いて、昼食を食べ損ねてしまった。今さらしっかりとした食事は重いな……とコーヒーブレイクのみで済ませることにした。
結局、なんの覚悟もないままに、再会の瞬間を迎えてしまった。
昴の兄であることを告げたときの、彼女の凍りついた顔。
『ほら、見ろ。やっぱり傷つけた』
過去の自分の声が、聞こえてくるようだった。
義兄妹になるかもしれない相手との一夜。
志弦の欲望のために、清香にまでその罪を背負わせてしまったのだ。
もし、あの夜、彼女の告白を聞いていたら……。
話の流れで清香の縁談相手が誰か、わかったかもしれない。そうすれば、自分たちは関係を持つこともなかったはず。
(だが、それでも……)
もし過去に戻れたとしても……志弦はやっぱり彼女の話を聞くことを拒むだろう。清香が欲しくて、たまらないから。
(勝手で最低な男だ。どう考えても君にはふさわしくない)
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大手町。高層ビルの立ち並ぶこのエリアに『大河内ホールディングス』もオフィスを構えている。現在の志弦はここの経営統括室に所属している。
時刻は午後三時。午前で終わるはずだった打ち合わせが異常に長引いて、昼食を食べ損ねてしまった。今さらしっかりとした食事は重いな……とコーヒーブレイクのみで済ませることにした。