だめんずばんざい





「美味しい…」
「それそれ、その顔が今日は見られなかったからね」

私がケーキを一口食べると向かいのすみ子さんが微笑んだ。

「私ね、幼稚園で仕事してたからいろんな保護者の方を見るだけでなく、たくさんお話もしたんだけど…結構多いのよ…自分の子どもに対する気持ちに悩んでいる親って。だから薫子ちゃんのお母さまのことをどうこう言うつもりはないけど…」
「けど…ってことは言うのね?ふふっ…」
「お義母さん…そうですね…薫子ちゃんのお母さまの気持ち自体は不思議でも不自然でもなくあり得ると理解できるんだけど、これだけ長期間距離を置いて生活している娘だからね…逆にもっと無関心というか‘はい、どうぞどんな結婚でもして’って感じかと思えば、要らない一言をおっしゃるものだからムッとしちゃった」
「それを薫子さんの前で言うのもどうなんだ?」
「お義父さん、大丈夫ですよ。私たちより…お母さまより…薫子ちゃん自身がもうすでにお母さまを理解している様子だったので」

私は以前ガクトに説明したように、私なりの分析を3人に伝える。

「父からは‘いつ帰ってくる?’と連絡があってもなかなか足が向かない時もあります。でもお兄ちゃんか奏太が一緒に帰ってくれるので、その時に地元の友人と会ったり祖母のお墓参りに行ったりするんです」
「カオルちゃんはすごく大人だわ。その分、私たちが甘やかしちゃう」
「そうだね。薫子さんが、うまく距離を取ってるんだろうね。櫂くんと奏太くんも、いい青年だね。岳人と寛人とも年齢が近いから仲良くやるだろう」
「それはすごく嬉しい。お兄ちゃんは大学からこっちにいたからまだいいんですけど、奏太は就職してからなのでこっちの友人がどうしても仕事絡みになってるんです。だから仕事と関係ない友人ができると嬉しいと思います」
「友人以上の兄弟よ」
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