だめんずばんざい





「俺も同じように思っているんだ…鍵を失ったタイミングに感謝するほどだよ」
「金曜日じゃないと私はあそこへ行かないから偶然だよね?」
「神がかった偶然…って…カオルちゃん…ポリポリ遠慮しなくていいよ」
「うん…でももうおしまい…お腹ポンポコリンだ」
「見せて」
「デリカシーの欠片もないね」
「でもカオルちゃんに好かれてる」
「否定出来ないのが悔しい」
「おっぱいよりお腹が出ててもカオルちゃんなら好きだよ」
「…ガクトが調子いい」
「カオルちゃんはおねむ?反応が鈍い?」
「ドッカーン飲みでチャンポンしてるからね」
「邪魔者がいなくて二人で良かった」
「邪魔者って…おじいちゃんやすみ子さんたちは気にしているかもしれないけど私はもう今の今まで忘れてたよ。近いうちに屋敷へ顔出そうね」
「五百旗頭薫子で行っちゃう?」
「サプライズ?」
「そう。サプライズ」
「黙って届け出られるの?」
「カオルちゃんは櫂くんにサインしてもらう?静岡まで帰る?」
「帰らない。お兄ちゃんで大丈夫」
「うん、俺も寛人に頼むから…「サプライズ」」

私たちはサプライズ入籍を決めた。いつ結婚したってガクトと私の関係性や距離感が変わるわけではない。

「じゃあ、俺たちの結婚に乾杯する?」
「私にまだ飲ませるとは…いかがわしい考えが脳内に蔓延しているとしか思えない」
「酒だけじゃなく尻尾カバーも仕入れてきたよ」
「…そうなの?」
「‘0.01ミリXLで明るい家族計画’と唱えながら買ってきた」
「声に出さずに唱えられたなら誉める」
「…出してないよ…自己申告だけど…」
「ガクトがそう言うなら信じるよ。愛すべき旦那様だもの。これからもよろしくね」

名前や外見で見るとハイスペックだけれども、中身はこの上なくキュートで緩い魅力に満ちたガクトと明日も明後日も同じペースで笑って生きる幸せ。


[完]
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