だめんずばんざい





「おかえり、カオルちゃん」
「ただいま…こんばんは…」

私はガクトにただいまと返したけど、オーナー夫妻の視線はすでに物言いたげだ。

「座りづらい…ってか、お客さんに向ける目じゃないよね?」
「そうだよね、ひどい夫婦だよ。別の店に行こうか?」
「うん…報告だけして出ようか…ガクトとは、おしゃべりが楽しいのに聞き耳を立てられてたら話も食事も進まない」
「それ、それだよね。カオルちゃんのそういうはっきりしたところが好き」
「うん、ありがと~」
「おおらかなところも最高」
「あははっ、大雑把とも言う」
「自分のことは…そうやって少し照れたのを隠すのも可愛い」
「そこは気づいてもスルーして」
「可愛いんだから仕方ないよね?カオルちゃん、俺と付き合って」
「いいけど…聞きたいことがある」
「「いいの?」」
「うるさい二人は仕事して。ん?カオルちゃん、どーぞ」
「うん。じゃあ、オーナーたち…お試しはひとつの問題点もなく、お互いが好きってことで私たち付き合います。報告は以上です。ちょっとデートにいってきます」
「「はぁ?」」

大きく口を開けたままの二人に手を振り、私はガクトと店を出た。話がやりにくいのは嫌だ。

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