だめんずばんざい
レストランではすでに弟の奏太が待っていた。
「薫、久しぶり。櫂お疲れ」
「そっか…ここ奏太の会社の近くになるのか」
「そうそう。会社の人たちに好評だったから予約してみた」
「お兄ちゃんが予約したのかと思ってた…ありがとう、奏太。元気そうだね」
「うん。予約は僕で支払いは櫂」
「お兄ちゃん、昇進したんだもんね。おめでとう」
「祝ってくれるのじゃなくて、俺が支払うのか?」
笑いながら私の頭をポンとひとつ軽く叩いたお兄ちゃんに
「私、永遠に事務員だよ」
と言うと
「薫、僕が昇進した時にもご馳走してあげるよ」
弟の奏太の手も伸びてきた。均等に2歳違いの兄弟とは仲がいい。まずお兄ちゃんが面倒見のいい人だ。私たち3人ともその傾向にあるのだが…
小さい時からお兄ちゃんと奏太に挟まれて歩くのが普通だった。お母さんとは手を繋ぐことがなかったかもしれない。お母さんはお兄ちゃんを可愛がっていて、お兄ちゃんが私にかまうと
「それくらい薫子が自分でやらなきゃ」
と必ず言った。そうなんだと思って小さい時からいろいろ頑張ったと自分でも思う。奏太のことも可愛がっていたお母さんは、男の子が可愛いんだろう。奏太が
「薫、すごーい」
って私に抱きつくと
「櫂はもっと上手にできたわよ?」
とか
「奏太の点数の方がいいじゃない」
って一言言うんだ。それでもお父さんも兄弟も私を可愛がってくれていたので十分だ。ただ進んで実家には帰らないけれども。