だめんずばんざい






ゴールデンウィークにも会っていないので、前回3人で食事をしてから2ヶ月ほどか…

「お父さんから‘いつ帰る?’って連絡はあったよ」
「だろうな」
「二人とも帰ってないんでしょ?」
「薫と一緒に帰るよ」
「俺も。ゴールデンウィークじゃなくても週末だけで十分帰れる距離だしな」
「私に気を使わなくても大丈夫だよ」
「薫子…そこで甘えないとダメだろ…まあ仕方ないけど…」

お兄ちゃん曰く、私はお母さんの目を気にして甘えるのが下手に育ったらしい。私自身は何も感じていないけれど。気がつけば、甘いお父さんとお兄ちゃんがいたし、奏太だって‘弟が生まれた’って思ってお世話しているつもりが、10歳ごろには私が妹のようだった。

その頃、国語の音読の宿題があって家で聞いてもらってサインをしてもらわないといけなかった。私は聞こえていれば誰かサインしてくれるだろうとソファーに寝転んだまま大きな声で、でも適当に音読する。

「ハイ、おしまーい。サインして、お母さん」
「えー寝転んで早口のお経みたいなのでいいの?」
「だめなの?学校ではちゃんと読むよ」
「家で出来ないのに学校で出来ないでしょ?そのための宿題でしょ?」

お母さんに言われて、それもそうかとのっそり起き上がりもう一度読もうかと思うと

「薫子、俺がサインしてやる。すらすら上手に読めたな」
「僕も聞いてたからサインする。櫂、僕のサインする場所残しておいて」

となって、私はもう読まなくて済むわけだ。さらにお父さんが帰ってきて、兄弟がその話をするとお父さんも聞いてもいないのにハンコを押してくれる。だから私はクラスの誰よりもごちゃごちゃとたくさんのサインのある宿題のカードを一年中提出するのだ。

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