だめんずばんざい





五百旗頭の名前に反応するのは周りなんだ。両親は普通。父さんと母さんは幼なじみで、母さんは普通のサラリーマン家庭に育った人。父さんもじいちゃん、ばあちゃんも母さんに幼稚園勤務をやめろとは言わなかったくらい自由だ。

俺と弟の寛人(ひろと)も、同級生に比べると習い事も少ないほどの小学生だったし、あの頃は楽しかった。

年齢が上がるにつれて、五百旗頭だから小遣い多いだろ?って言う奴や、五百旗頭だからモテるだろ?って言う奴がどんどん増えていく。そしてもちろん、五百旗頭だから出来て当たり前と言う奴も出てくる。これが中高生時代で、大学生になると、五百旗頭は自分の友達だと意味のわからない自慢をする奴が出現する。

だから普通の感覚の家では緩く、外ではしっかりとした五百旗頭岳人が出来上がったのかもしれない。

しかし20歳で一旦家を出るという、謎のしきたりのようなものにより、家でゆるゆるの俺が一人暮らしをしたわけだが…自分で挫折感を味わうほどのひどい生活だったので、1年後に寛人が家を出たところへ転がり込んだ。

小言を言われてケンカをしながらも、勉強や仕事のインターンシップ等ではひとつ違いの寛人とは仲よくやっていたので卒業までは無事同居していた。その後は、五百旗頭組のいろいろな仕事を経験するために全国の支店や現場にいることが多かった。そして4月から今の肩書きで本社勤務となり、寛人も他部署ながら本社勤務。同居を再開したら‘家では大学生の時と変わらないな’と呆れられ、鍵を失った時に‘自分の家の鍵ならいいけど…最悪。無理。出て’と冷たく言われた。これは寛人がマジでキレているので俺は静かに部屋を出た。

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