だめんずばんざい





本社勤務が決まってすぐにマンションは購入していたが、6月にならないと入居できない。五百旗頭の部屋へ帰ることは出来るのだが、少し考えようと叔母夫婦のダイニングバーで壁にもたれビールを飲む。

そこでカオルちゃんが、彼氏と別れたという話を叔母としているのが耳に入る。斜め後ろから横顔を見ると、以前ここで見たことがあるアイドル以上に目の大きい子だ。

別れた彼氏のことを悪く言うことなく、逆に‘オーナーは完璧な男なのか?’と叔母に切り返してからの

「完璧かどうかはわからないけど、あちこちで脱ぎ散らかさないわよ?」
「…脱ぎたくなって、そこで忘れてしまうんでしょうね」
「仕事もずっとここ一筋で続いてるわよ?」
「…転職を認めないようなのってステレオタイプだって言われませんか?」
「浮気もないわよ?」
「モテる男はつらいですよね」
「ははっ、カオルちゃん、僕がモテないって?」
「そう聞こえましたか?」
「5割ほど?」
「…6割含みましたけど?」

華麗な返しを連発する、その軽快なトークに魅せられる。こういう人がいるんだ…こういう人と一緒にいたい。そう思った俺は‘バイト’などどうでもいいことを口にして、3人の会話に割り込んだ。

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