だめんずばんざい
当然バイトは断られ‘アルバイト探しながらビール飲んでないで節約しろよ’など、オーナーが適当なことを言い俺を帰らそうとすると
「ビール一本くらい…誰でも息抜きが必要なこともあるんじゃないですか?」
カオルちゃんがさらっと言う。いいな…人を否定しない子なのか?
「ありがとう…何ちゃんかな?俺はガクト」
「…カオルです」
「ありがとう、カオルちゃん。皆、俺に厳しいから嬉しかった」
「何が‘皆厳しい’だ。30過ぎてるんだからもっとしゃきとしろよ」
「えー年齢イコール何かの一括りには反対だな、俺」
「…私も…」
「おっ、カオルちゃん、気が合うね」
だが、今日の今日でどうにもできない。カオルという名前だけ覚えて帰ろうとポケットからビール代を小銭でカウンターに置いた。すると寛人に追い出されたことを知っているオーナーが俺に聞く。
「まだ帰れるのか?」
「うーん、たぶん?多少だけど俺の荷物があるのに勝手にどうこうはしないだろうから」
「希望的観測だな」
「バレた?真冬でも真夏でもないし何とかするよ」
「野宿?」
「キャンプと言って」
「…キャンプ…」
カオルちゃんの呟きに彼女を見るとクスリと笑ったようだ。
「うん?カオルちゃん、今笑った?一緒にキャンプする?」
そう言う俺に叔母が慌てて言う。
「ダメダメ。カオルちゃんに声掛けないで」
「何で?」
「働いてるかどうかもわからない男はダメ」
「一応は働いてるけど…何?カオルちゃん、スペック高い男が好みなの?」
「「正反対」」
残業しないのは人の何倍も昼間に働いているからだよ、と叔母に心で毒づきながら…カオルちゃん、正反対?だめな奴がいいのか?