恋とも云えない
2.手が触れ合えば恋人で
友達が今流行りの休日のホテルステイがよかったという話を聞いて、私にもご褒美が大事と真似することにした。

なるほど、近頃のビジネスホテルは大浴場やサウナも整備されていて居心地がよい。

何より、ホテルから見下ろす街の光がきれいだった。私もこの光の一部分なのだと思うと、一人でも寂しくない気がしてくる。

けれど、かつての恋人を思い出してしまうのは、ホテルという場所だからかもしれない。

「凛」

名前を呼ぶのはいつも2人のときだけ。
恋とも云えない、後ろめたさと嘘。

でもあのときは、私のことを心底愛してくれているのだと思っていた。妻や子供がいようと、家庭よりも私が大事なのだと、私はそれほど愛されている存在なのだと思っていた。

家族で過ごしたいイベントは、必ず家族が優先になるというのに。

それをものわかりのいい、いかにも余裕がある女ぶって、受け入れているふりをする。本当は誰の目も気にせずデートして会いたいときに会いに行けて、恋人だと自慢したいのに。

誰にも打ち明けられないまま、私だけが彼の理解者だと勘違いし、恋という賞味期限が切れてしまえば、あっという間に手の平返される。
< 7 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop