恋とも云えない
「そういえば日高…さんはおいくつなんですか?」

先頭を歩いていたのに、振り返る日高。

「それを聞いてどうしたいんですか?」

いや、どうしたいわけでも、日常会話の一部なんですが。答えに困っていると

「32歳。でもだからといって敬語とかなしね。年齢なんて記号と同じ」

「はぁ。よくわかりませんが」

いきなり手を掴まれ、人混みを二人で駆け抜ける。意味もわからず走っているこの状況に叫ぶしかない。

「なんで走るの」

「意味ないこと、急にしたくなる」

なんだそれは。意味ないこと、意味あること。無駄なことはしないって鬼のように気をはってる毎日に、こんなバカらしいことが起こってたまるか。

「意味わからないし」

「俺もそう思う」

数分走った後で、コンビニの前で二人息を整える。なんだ、この人は。いきなり人を走らせるとか、あり得ない。

あり得ないけど、なんなんだこの人は。



嫌いになれないじゃないか。
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