たとえこの世界から君が消えても

2

母さんが起きなくなってから一週間が経ち、六月に入った。


朝から天気が悪く、雨は降っていないが今にも降り出しそうな黒い雲が空いっぱいに広がっている。



「蓮、大丈夫か?まだ気分が悪いなら、今日も学校休んでいいんだぞ?」



靴を履いていると、心配そうな顔をした父さんが背後から声をかけてきた。



「平気。そろそろ行かないと、母さんに怒られるし」


「ははっ。そうだな」


「じゃあ、いってきます」



母さんは命に別状はなく、下半身にも特に後遺症は残ることはなかったが、まだ意識を取り戻さない。


俺は、母さんが目を覚ましていないのに自分だけのこのこと学校に行く気にはなれず一週間休んでいたが、ふとこんな自分を母さんが見たらどう思うだろう?と思い、今日学校に行く決断をした。


母さんが起きたら、今度こそ素直な気持ちを伝えたい。
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