たとえこの世界から君が消えても
エピローグ
ダダダダッと階段を駆け下りる慌ただしい音が聞こえてくる。



「やっと起きた…」


「本当に蓮は朝が弱いなあ」



コーヒーを飲みながらテレビを見ていた奏多と苦笑いをし、できたてのお弁当を包む。



「ごめん、母さん。寝坊したから朝ごはん食べれない」


「何回も起こしたんだからねー?しょうがない、おにぎり作ったから食べながら行きなー」


「おお、ありがとう」



もう少し小言を言おうと思っていたが、にかっと可愛らしく笑う息子にそんな気はどこかにいってしまった。


一時期、反抗ばかりしていた蓮は、今では驚くほど素直になった。



素直になることは簡単ではない。


それは、身を持って体験した私が一番よくわかっていた。


そんな試練を蓮が自分で乗り越えてくれたことは、涙が出るくらいすごく嬉しかった。



「じゃ、いってきます」


「うん、いってらっしゃい!」



蓮が玄関のドアを開けると同時に、ぶわっと強い風が顔に吹きつけてきた。



ゆっくりと目を開けると、同じように唐突な強い風に驚いたように目を瞬かせている蓮と目が合う。


耐え切れなくなり吹き出した二人の笑い声が、爽やかな空に消えていった。
< 70 / 70 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:3

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

悪女の私がヒロインみたいに溺愛されてます!
杏柚/著

総文字数/28,471

恋愛(学園)58ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
転生したのはヒロイン…ではなくて、まさかの悪役の方。 物語にはヒロインを輝かせるために悪役はつきもの。 傲慢で、自分勝手で、みんなから嫌われていて、 そして、誰よりも孤独な悪女。 それが、私–––。 ◆ ◇ ◆ 物語の悪女 宝槻 乃愛(Houtsuki Noa) 「気安く私に話しかけないでくれる?」 誰よりも傲慢で、わがままで、人を傷つけることをなんとも思わない。 「…私のことも見てよ」 だけど本当は、誰よりも孤独で誰かのヒロインになりたかっただけの女の子。 そんな悪女に、私が転生しちゃった…? ◆ ◇ ◆ 「一生俺が守る」 「他の男なんて見てんなよ」 「誰よりもおまえを想ってる」 「僕だけにしてよ」 悪女の私がこんなに溺愛されてもいいんですか–––!?
初恋が終わらないのは、菖蒲くんのせい
杏柚/著

総文字数/6,584

恋愛(オフィスラブ)15ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
最初は、いつも隅っこにいるような大人しい 私と同じタイプの人だとそう思っていた。 「これ、気づいちゃった?」 それなのに、不敵に笑う本当の彼は、 私の知る彼とはとてもかけ離れていて…?
初恋が終わらないのは、菖蒲くんのせい【1話のみ】
杏柚/著

総文字数/6,205

恋愛(オフィスラブ)1ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
最初は、いつも隅っこにいるような大人しい 私と同じタイプの人だとそう思っていた。 「これ、気づいちゃった?」 それなのに、不敵に笑う本当の彼は、 私の知る彼とはとてもかけ離れていて…?

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop