ごくごく普通なわたしと美川くんの平凡な日常



粗末なパイプ椅子に両手足を荒縄で括られて、布で目と口を塞がれた一人の男子生徒の姿に冷めた目を向ける。


恐怖か怒りか、はたまたもっと違う感情なのかは不明だが体を震わせて言葉にならないくぐもった声が先ほどから聞こえる。ぼたぼたと布では吸いきれなった涎が地面に落ちている姿がまるで理性を失った野犬のようだ。


こういう本能で生きている系の生き物は生理的に受け付けないんだよね。勿論僕だって人間だから本能的な欲求は少なくないけど、それが理性を手放す理由にはならない。本能を理性で制御してこそ人間というやつでしょ。


だからこそ目の前の害虫はいただけない。自らの欲望に溺れて彼女を煩わせたのだから。


静かに側に控えていた部下に手を出せば、心得ていたように何枚か重ねられた紙束を渡される。大まかに目を通して確認するけど、よくもまぁと自然と口角が上がってしまう。



「へぇ……あぁ、本当に腹立たしいね」



自然と低くなってしまう声にそばにいた部下の体が微かに揺れる。それだけ僕から怒りの感情が出ているのだとわかってもこれは抑えようとも思わないな。




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