経理部の女王様が落ちた先には
「いつもありがとうございます。」



秘書の男性がいつもと同じように優しく声を掛け、契約書を入れた封筒を受け取ってくれる。



「こちらこそ、いつも申し訳ございません。
定時ギリギリに伺ってしまって。」



そう言って、深くお辞儀をした時・・・



「そちらの方は?」



広い部屋、少し遠くのソファーの席で向かい合って話していた男性が、私を見ながらそう言って、立ち上がった。



秘書の男性がうちの会社名を伝えると、「ああ、昔からの所ですね。」と言って、こっちに歩いてきた。



その、あまりに美しい男性に、わたしは目が離せなくなる。



「副社長の藤岡と申します。」



「・・・っ私、花崎麻美と申します!!」



初めて会う副社長、それも凄い美しい男性で、私は慌てて自己紹介をしてお辞儀をする。



「花崎さんですか。よろしくお願いしますね。」



と・・・



藤岡副社長から、名刺を渡される。




慌てて、ビジネスマナー通りに名刺を受け取ったけれど・・・




「申し訳ございません。
私には名刺がありませんでして・・・。」



「名刺が、ないんですか?」



「はい・・・。」



「部署は、どこですか?」



「経理部です・・・。」



「そう・・・ですか。」



藤岡副社長が、少し悩んでから・・・



「何か、書く物あるかな?」



と、秘書の男性に聞き・・・



「名前、書いて教えて下さい。」



そう、優しい笑顔で私を見下ろす。



秘書の男性がスーツの内ポケットに手を入れる所を見ながら、私も鞄に手を入れ・・・



「持っておりますので・・・」



と、鞄に入れていた紙とボールペンで自分の名前を書いた。



そして、その紙を藤岡副社長に名刺を渡すように差し出す。



「こんな付箋で申し訳ございませんが・・・」



恐る恐る、藤岡副社長を見上げる。
藤岡副社長は、受け取った付箋を見て声を上げて笑った。



「可愛い付箋だね。ウサギの形なんだ?」



そう言って、私をじっくりと、見下ろした・・・




その時・・・





「副社長!!奥さんに言いますよ!!」




と、さっきまで藤岡副社長と話していた男性が、ソファー席から声を掛けてきた。
その言葉に笑いながら、藤岡副社長は私に手を振り戻っていった。
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