【完】ハッピーエンドに花束を

「本当、何で今まで芽依のこと知らなかったんだろうって感じ」
「ふふ。もっと早く知っていたら好きになったかもしれないのにって?」

 冗談めかして言ったつもりだった。
 けらっと笑って、暁人の様子を見る。きっと「さぁね」なんて適当に流されるのだろうと、そうたかを括っていた。

「そうかもしれないね」

 しかし、驚くことに彼は肯定したのだ。

「へ?」

 鳩が豆鉄砲を食らったような表情をしたままの私を置いて、暁人はカバンからペットボトルのお茶を取り出して水分補給を始める。

 男らしく喉仏が動いている様子を黙って見ていた私を横目に見た彼は「飲んでいいよ」とキャップを開けたまま渡してきた。

「寒くなってきたし、どこかのカフェでも入ろうか」

 お礼に何かごちそうさせてよ、と笑う。

「うん」

 カフェデートがしたいって言ったの、覚えてくれていたのかな。付き合った初日にしたい事リストに挙げたことを覚えている。

 嬉しいけれど、嬉しいけれど、今脳内を占めているのはこのペットボトルである。
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