【完】ハッピーエンドに花束を

「いらっしゃい。ごめんね、駅まで迎えに行けばよかった」
「全然大丈夫。・・・お邪魔します」

 そして高校生活最後の週末。やりたい事をし尽くした私に「家デートはどうかな」と提案してきたのは暁人の方からだった。
 たまたま両親どちらとも出張が重なり、明日の夜までは帰ってこないらしい。
 何も深く考えることもなく「いいよ」と軽く返事をした私は、今になって緊張し始めている。心臓が喉から飛び出しそうだ。

「俺の部屋、2階の突き当たりだから。飲み物持ってくるから先入ってて」
「うん、分かった」

 階段を昇って、言われた通りに突き当たりの部屋のドアを上げる。

「シンプルな部屋・・・でも、なんか良い匂いする」

 ぐるりと見まわして部屋を眺める。ライトグレーのカーテンに合わせた、同じ色の布団。綺麗に参考書が並べてある勉強机。フローリングの上にはローテーブルが置かれていて、至ってシンプルな部屋だった。

「あ、修学旅行の写真かな。体育祭の時の写真もある」

 ふと目に入ってきたのは壁に貼られている数枚の写真。全て高校に入学してからの写真で、私もまだ見たことのない表情で笑っている暁人がいた。


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