その人形は恋の行方を知っている
「西川、また明日な!」
私たちのすぐ横を、松村くんが笑顔で声をかけて通り過ぎていった。
「あっ、ま、また明日!」
慌てて挨拶を返すと、少し声が上ずってしまった。ちょっと恥ずかしい…。

松村葵くんはいつも笑顔で明るくて、みんなの人気者で、おまけに顔も整っている。そして…私の、好きな人。
今だって、声をかけられたことに驚いて、心臓が騒がしいほどドキドキと音を立てている。

「うわ、あいつっ!咲葉にだけ声かけて、うちのことは無視かよっ」
隣で花恋が文句を言った。
「松村、絶対咲葉のこと好きじゃん」
「…えっ⁈」
花恋の突然の言葉に驚いて思わず目を見開く。
「そ、そんなことないって…!」
そう。そうだよ。松村くんみたいな人が私なんかを好きなはずがないんだ。これは、私の…片想い…。
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