先生、私がヤリました。
ドアの外側に出てきた少女は私の隣にたった女の子よりも少し背が小さかったです。

女の子とハヅキくんの間くらいでした。
女子にしては短すぎるくらいのショートカットと、小さい骨格。

顔が小さいから余計にそう見えるのか、パッチリした大きな目。
大人になったらきっと美人になるんだろうなって思いました。

私は女の子を見ながら、少女に言いました。

「ちょっとお話聞いてくれる?」

少女が頷くのを待って、女の子が一歩踏み出しました。
黙ったままクラフト袋を差し出しました。

少女は一瞬戸惑ってたけど、その袋を受け取って、中身を見ました。

「これ…。」

「ごめんね、私、大事な消しゴム無くしちゃって。本当にいっぱい探したけど見つかんなくて…。だから新しいの買ってきたんだ。ごめんなさい…。」

消しゴムを受け取った少女は震える声で言いました。

「これじゃ本物じゃないよ。お母さんが買ってくれたのはもう戻ってこないもん…。」

その言葉。女の子は傷ついたでしょうね。
私だったらもう絶交するしかないんだって諦めちゃうと思います。

でも子どもってやっぱり不思議です。
そんなに一つの消しゴムに執着するほど怒っていたはずなのに、少女は言ったんです。

「でもいいよ。ありがとう。」って。

女の子もさすがにびっくりしてました。

「えっ…。」

「酷いこと言ってごめんなさい。大事な消しゴムだったから意地悪言いたくなっちゃったの。でも貸したのはこっちだし。お母さんから買ってもらったのは戻ってこないけど、コレ、初めて友達に貰った物だから。ありがとう。」

「許してくれるの?」

「うん。仲直り。」

女の子は良かったぁ…って言って涙を拭きました。

私は少女にちょっと待っててくれるかなって言って、女の子と一緒に階段を下りました。
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