先生、私がヤリました。
もう一回ノックして待っていると内側から鍵を開ける音がしてゆっくりドアが開きました。

チェーンを掛けたままなのか、やっと顔が認識出来るくらいの隙間から少女が顔を出しました。

「どちら様…ですか…。」

小さい声の中にはっきりと警戒心を感じました。
「知らない人が来た時」の対応として親に言い付けられているのかしっかりと掛けたチェーンと言い慣れていなさそうな「どちら様ですか」って言葉がなんとなく、少女から少女らしさを無くしているように見えました。

なんて言うんですかね。
防犯対策としては正解なんですけど、妙に「大人びなきゃいけない」っていうか、長い時間、自分を自分で守らなきゃいけないっていうか、そうやって過ごしてきたみたいな。

言葉にするの難しいですけど、なんかそんな感じがしたんです。

私の隣に立つ女の子を見て少女は「あ…」って言いました。

「この子の知り合いなの。ね?」

「うん…。」

「お話したいことがあるんだって。開けてくれるかな?」

少女は私と女の子を交互に見てから私で視線を止めました。

「お姉ちゃんはお姉ちゃん?」

「そうよ。」

少女も女の子と会ったばかりの時と同じ反応をしました。

「ちょっとワケがあって男の人に変装してるの。」

「…ふぅん。」

少女は不思議そうに言ってからちょっと背伸びしてドアのチェーンを外しました。
重たそうにドアを開けてくれました。
ギギ、と錆びたみたいな音がしました。

インターホンの故障も鉄扉の錆も早く直してあげて欲しいと思いました。
ついでに畑みたいになってしまった砂場も。
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