星と月のセレナーデ
『 大丈夫、大丈夫だよ。』
私自身にも彼にも言うように
少し小さな声で呟けば
彼がゆっくりと振り返った
何故か私を見て目を見開いていたが
そんなこと気にもならないぐらい
近くで見た彼は 狼 だった。
「 お前名前は...。 」
威嚇をやめた彼が優しい声で私に問いかける
心地いい声
ガヤガヤとさっきまで聞こえていたはずなのに
この神社には私たちしかいないのではないかと思う程
彼の声しか私の耳には届かなかった
『 ........な 』
バンッと大きな音を鳴らし無数の花火が打ちあがる
同時に手に持っていたスマホが鳴る
電話に出ると
「 早く帰っておいで 」とのことだった
『 私、いかなきゃ... 』
彼に背を向けて
私はその場から走り去った
後ろ髪引かれて振り返れば
彼の口が動いたのが見えた
なんて言っていたのかは彼しか知らない