政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
 やはり涼成さんと話し合いが必要なのだろうか。でもそれって、「あなたを疑っています」と言うようなものじゃない? それで彼を傷つけるようなことになったら……。

 このまま過去には触れず今を大切にするべきなのかもしれない。自分の中で消化できるのなら、おそらくそれが一番いい。

「恵茉ちゃん、ごめんね」

 ずっと黙り込んでいた私をどう扱ったらいいのかわからないのだろう。眉根を下げたお母さんは反省している、といった様子で身体を小さくしている。

「こっちこそごめん。皆が黙っていたのは、私を思ってのことだったんだよね」

 心配かけないように笑顔を作ると、お母さんは安心したようにこくこく、と頷く。

 これ以上話を掘り下げることもできなくて、私は心ここにあらずのままお母さんの世間話を上の空で聞いていた。

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