政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
 十二時前のカフェの席はいくつか空いており、ドリンクを注文して早速本題に移る。

「それで、お話というのは?」

 ホットコーヒーを注文した坪井さんは「実はですね……」と言ってから、のんびりとカップを持ち上げた。同じものを頼んだ私もカップに口をつけたが、熱くてまだ飲めそうにない。

「ラウンジカフェで、恵茉さんと千石さんの近くに座っていたのは偶然ではないんです」

「えっ?」

 心臓がドクンドクンと大きな音を立て呼吸がしづらくなる。

 カップをソーサーに戻して、坪井さんからは見えないように太腿の上で両手を揉み合わせた。

「社長は以前からそちらの土地に大変興味を示しており、どうにか手に入れられないかと思案していたんです。そんな折に、社長が懇意にしている取引先の方からおふたりが商談をするという話を耳にして、情報を得るために接近しました。絶対に売らないという姿勢をこれまで見せてきたので、その場で取引は成立しないだろうと踏んだ社長の作戦ですね」

 これが嘘は本当かまだ判断がつかないけれど、初めて耳にした話に言葉が出ない。
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