私の嘘と彼女の真実
「こちら、結婚相手の石嶋(いしじま)和史(かずふみ)さん。
かずくん。
こちら、親友の季実枝(きみえ)ちゃん」

友人の友子(ともこ)に紹介され、季実枝は引き攣った笑顔を浮かべた。
相手も、微妙な笑顔を貼り付けて黒縁眼鏡の奥から自分を見ている。
まさか、――元セフレと親友の結婚相手として再会するとは思わない。

「は、はじめまして。小国(おぐに)季実枝です」

「……はじめまして、石嶋です」

いやいや、これはどういう状況なんだろう?
などという心の声は留めておいて、互いに挨拶をした。
きっと彼も、同じ気持ちだろう。

「それで。
友子と……石嶋さん、は、どこで知り合ったの?」

「ええっとね……」

季実枝たちの妙な空気には気づかず、友子がふわふわ脳天気に馴れ初めを話しだす。
そのあいだ季実枝たちは作り笑顔を保ったまま、無言で見つめ合っていた。

季実枝と石嶋――和史が出会ったのは、二年前の合コンだ。
そこで意気投合して一夜を共にしたあとは、一ヶ月ほど付き合った。
けれどなにかと性格があわず、しかしながら身体の相性は最高なので、セフレに落ち着いたというわけだ。

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