悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
「怖がらせたよな、本当にすまなかった。俺も余裕がなかったのは認める。年下の君に合わせるべきだった」

「え? いえ、エリオット様が謝ることなんて……」

肩越し振り返ると、心配する彼の紺色の目とぶつかって驚く。

「気持ちが急いて怖がらせた、本当にすまなかった。だから謝らせて欲しい」

「……もう、しない?」

「仕切り直してキスはさせて欲しい、とは思ってはいるんだが……」

正直な人だ。

そういうところが少し可愛い、なんて思っている間に、エリオットに手を借されてソファに二人で座り直した。

「アメリアが懸念することはしない。約束する。せっかくの二人の時間が無くなってしまうのは、嫌だ」

両手を取られたうえ、真摯に告げられて耳朶まで熱くなった。

「エ、エリオット様、恥ずかしすぎるからもういいわよ。謝罪は受け入れるから」

「アメリアは、このまま出たい?」

「私も……すぐには出たくない、かも」

もう一度、今度は唇にキスを。

そんなことを望んでいる自分の気持ちに気付いて、アメリアは熟れたりんごのごとく顔を真っ赤にした。

伝えるのは恥ずかしい。

でも、嫌がることはしないとエリオットは約束してくれた。だから意思表示しないと、彼はどんなに自分がしたくても我慢してアメリアを見送るだろう。

「ほ、他のところを触らないのなら、いいわよ」

「そうか。良かった」

エリオットが小さくほっとする。

「それに、気にしていることも、そもそも俺が直接動けばいいと分かった」

なんのこと?と不思議に思った。けれど頭を撫でられた時には、彼の唇が寄せられていて――。

アメリアは自然に目を閉じ、彼と唇同士を重ね合わせていた。

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