こころが揺れるの、とめられない
三澄くんに握られた手が、熱を逃がしてくれない。
わたしの体温は、どんどん上昇していく一方だった。
「誰にでも、こうなの?」
わたしたち以外誰もいない保健室に、三澄くんの低い声が響く。
「上村さんは、こんな風にされたら、……誰にでもドキドキできる?」
違う。
違うよ。
きっと——。
三澄くんだから、だよ。
「——っ」
口をついて出てしまいそうになった言葉。
喉元までこみ上げたそれを、慌てて呑み込んだ。
「わ、わたし、……着替えなきゃだからっ」
言いながら、勢いよく立ち上がる。
繋がっていた三澄くんの手は、わたしからあっけなく離れた。
「先に、戻るね。また明日……っ」
顔を、背けたまま。
わたしは返事も待たずに、足早に保健室を後にした。
更衣室に向かって、誰もいない廊下を走る。
自分の胸の音が騒がしいせいか、とうとう鳴ってしまったチャイムが、いつもより小さく聞こえた。