こころが揺れるの、とめられない


どうしよう。
どうしよう。


もうこれ以上はやく動けないよ、と悲鳴を上げているわたしの心臓。


お願いだから、おさまってよ。

……でなきゃ。


これじゃあ、まるで——、


「おせーぞ」


突然割り込んできた声に、わたしは強制的に現実へと引き戻された。

更衣室の扉のすぐ横に立っていた思わぬ人物に驚いて、ピタリと動きを止める。

必死に抑えようとしていた胸の奥の衝動も、自然と、徐々に静まっていった。


「綾人……え、どうしたの? チャイム鳴っちゃったよ?」


とっくに授業は始まってしまっている。

綾人のクラスは、今頃、体育館で準備運動をしているはずだ。


「どっかのバカが気になったから」


……バカ、って……。


まっすぐにわたしを見てくる綾人。

その『バカ』とやらは、わたしのことだと言いたいみたいだ。

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