こころが揺れるの、とめられない
「……ん。じゃ、俺はもう戻るな」
「……心配してくれて、ありがとう……?」
「なんで疑問系なんだよ、バーカ」
……また、バカって言った……。
抗議の目を向けると、ニッ、と無邪気な笑顔が返ってくる。
「なんかあったら、俺——とか、可奈に、すぐ言えよ」
「う、うん」
「じゃーな」
綾人は軽く手を挙げ、軽やかな足取りで体育館の入り口へ向かっていく。
その大きな背中を見ながら、わたしは胸のあたりに手を当てた。
たった今まで元気に飛び跳ねていたはずのそこが、嘘みたいに重たく沈み、モヤモヤと渦巻きだしていた。
……それが、いったいなにに対するモヤモヤなのか。
わたしにはよく、わからなかった。