スクールアイドル防衛隊〜通行人A子と弱虫王子〜
「それでもっ、お(ねが)いします! その、オレに(たい)しても大丈夫(だいじようぶ)みたいだし、こんなこと(ほか)(ひと)(たの)めないんだ・・・!」

 ()(かえ)った(さき)花菱(はなびし)くんは、必死(ひっし)そうで、不安(ふあん)そうで、なんとか(たす)けてあげたいだなんて、グラッと(こころ)()らいでしまった。

 だめだ。

 (ことわ)らなきゃ。

 (かか)わっても、きっと(ろく)なことにならない。

「・・・なんで、恋人(こいびと)必要(ひつよう)なんですか。」

 なんとか(たす)けてあげたい、そんな()きあがる(おも)いを()しとどめて(ことわ)ろうとしたのに、その言葉(ことば)が出なかった。

 (わたし)手首(てくび)(つか)んでいる(かれ)()が、(すが)ってきているように(おも)えて、()(はら)えなかったんだ。

 ああ、(わたし)のバカ・・・。

 なんでここで(ことわ)れないのかな。

 (かか)わると、確実(かくじつ)面倒(めんどう)なことになるって()まってるのに。

 (かり)恋人(こいびと)なんて論外(ろんがい)だよ。

 さっき風紀委員(ふうきいいん)部屋(へや)()いた(はなし)だけでも(すご)かったのに、この()恋人(こいびと)になんてなったりしたら()されかねない。

 自分(じぶん)()される未来(みらい)想像(そうぞう)してギョッとする。

「それは・・・。」

 花菱(はなびし)くんの()がまた()らぐ。

 そうして、一瞬(いつしゆん)()せられた睫毛(まつげ)が、(あか)るい青緑(あおみどり)(かげ)()とした。

「オレ、(じつ)(いま)、ストーカーされてるみたいで。」

 ストーカー!

 その言葉(ことば)(ふる)えるようだった。

 ストーカーなんて、ニュースでしか()いたことがない。

 それがこんなに身近(みぢか)被害(ひがい)を受けている(ひと)()るだなんて! 
 
 綺麗(きれい)すぎるのも(かんが)えものだなぁ、なんて、まだ現実味(げんじつみ)(かん)じられていない(あたま)(おも)う。

「・・・あの、こっち()て。」

 花菱(はなびし)くんはゆっくりと(ある)いて、ある靴箱(くつばこ)(まえ)()まった。

 そして、花菱(はなびし)()かれた靴箱(くつばこ)(ひら)くと、そこには下靴(したぐつ)一緒(いつしよ)何枚(なんまい)かの封筒(ふうとう)(はい)っている。
 
 (うす)いピンクの可愛(かわい)らしい封筒(ふうとう)だった。

「ラブレター?」

「ちがう。」

 花菱(はなびし)くんはゆるく(くび)()ると、そのうちの1つの封筒(ふうとう)()()し、(なか)から数枚(すうまい)写真(しやしん)便箋(びんせん)()()して()せてきた。

「これが、(しゆう)数回(すうかい)(とど)くんだ。」
 
 その写真(しやしん)にはどれも、花菱(はなびし)くんが写っていた。

 どんなときでも本当(ほんとう)()になる()だなぁ、と(おも)いながら()ていくと、違和感(いわかん)()づく。

 (うし)姿(すがた)横顔(よこがお)……、それらの写真(しやしん)(すべ)て、目線(めせん)があっていなかったんだ。

 全部(ぜんぶ)盗撮(とうさつ)だ、と()がついてゾッとする。

 花菱(はなびし)くんはゆっくりと、(たた)まれていた便箋(びんせん)(ひら)き、(わたし)()()してきた。

(わたし)はいつでもあなたを()ている」

 印刷(いんさつ)された無機質(むきしつ)文字(もじ)で、たった一行(いちぎよう)そう()かれていた。

 差出人(さしだしにん)場所(ばしよ)には(なに)()かれていない。
 
「この写真(しやしん)(ほか)にも下校中(げこうちゆう)のときの写真(しやしん)とかもあって、ずっとつけられてるみたいなんだ。」

「あの、盗撮(とうさつ)とかがあるんだったら、もう警察(けいさつ)相談(そうだん)した(ほう)がいいと思います。」

 (わたし)手渡(てわた)された手紙(てがみ)便箋(びんせん)花菱(はなびし)くんに(かえ)した。

 盗撮(とうさつ)なんて、立派(りつぱ)犯罪(はんざい)だ。

 それに、盗撮(とうさつ)までしてる(ひと)花菱(はなびし)くんに彼女(かのじよ)ができたくらいで()まれるのかな。

 余計(よけい)にこじれて、エスカレートしそうだし、危険(きけん)だと思う。

 そもそも、盗撮(とうさつ)しているのが学生(がくせい)かも()からないのに。

 そう(つた)えたら、花菱(はなびし)くんは(すこ)(うつむ)く。
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