憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました


由美が電源を切ってスマートフォンを置くと、早苗が話しかけてきた。

「いつものですか?」
「ええ。でも断りました」
「断ったのかい?」

森医師が驚いた顔をしている。
裕実の頼みを断ったら、由美の立場が悪くなるのではと考えたのだろう。
この場にいるのは、立花家での由美の置かれた立ち位置をよく知っている人ばかりだ。

「家族の集まりがあるんですって」
「家族の……?」

茶を配っていた五月が手を止めた。

「なんてことでしょう!」
「由美さんも家族じゃあないですか!」

早苗は驚きの声をあげるし、五月は茶宅を持つ手をプルプルと震えさせている。

「いいのよ、私は気にしていないから」
「ですが……」

五月がなにか言いたそうにしたが由美は遮った。

「デイサービスの準備で忙しくなるし、これからは断るから大丈夫」

五月たちはそれ以上なにも言わなかったが、少しだけ雰囲気が重くなってしまった。

「この家でデイサービスを始めても、あちらは大丈夫なのかい?」

森医師も、‶あちら”と表現するくらいには気を遣っているようだ。
由美と裕美との関係が悪化したら、父たちから事業を反対されるのではと心配になったらしい。




< 64 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop