グリーンピアト物語~命を紡ぎ愛を紡ぐ奇跡~
「国王様? どうされたのですか? そんなに急がないで下さい、まだ療養中なのですから」
「慌てますよ! セシレーヌ先生が、いなくなってしまうなんて嫌ですから」
「え? 」
何事かとセシレーヌを見たクラウドルだが、なんとなくセシレーヌの顔を見ていると何があったのか把握できた。
「セシレーヌ先生。私は本気で言っているのです、信じて下さい」
そう言われても顔を背けたまま、セシレーヌは黙っていた。
「国王様。少し、落ち着いて下さい。なんだか、セシレーヌも戸惑っているようです。少し、時間を頂けますでしょうか? 」
ジュニアールはじっとセシレーヌを見つめた…。
確かに困惑しているようにも見えるセシレーヌの表情を見て、今日は一旦引き下がろうと思った。
「分かりました。でも、セシレーヌ先生が私の担当を外れる事は許しませんから」
それだけ言うと、ジュニアールは病室へ戻って行った。
ため息をついたセシレーヌは、ふと、アドガラスに映る自分の顔を見た。
小さな頃の面影が残っているような、綺麗な顔に戻っているのを確信すると信じられない気持ちが込みあがってきたが、同時に辛い気持ちも込みあがって来た。
(やーい! お化けが来たぞ! )
(食われるぞ! )
(逃げろ! )
小学生の頃から同級生にずっと、顔の事で酷い事を言われていたシレーヌ。
火災に巻き込まれたのは小学校3年生の時だった。
父の仕事の関係で、逆恨みをされたことで家を放火された。
寝ている時の事で、気づいた父親がセシレーヌを庇って助けてくれた。
母は自力で何とか脱出して助かったが、火傷と怪我は酷く手が不自由になった。
父は大火傷を負って暫く入院していたが、入院中に肺炎になりそのまま亡くなってしまった。
母と2人になり、あまり贅沢はでいなかったが父が残してくれた遺産と母の実家が資産家であったことから人並の生活が出来ていた。
しかし顔にやけどを負ったセシレーヌに、非難の言葉をかけるものも多かった。
初めは傷つき泣いていたセシレーヌだったが、次第に打たれ強くなり父が助けてくれた命を無駄にしたくないと思い医師への道を目指したのだ…。