グリーンピアト物語~命を紡ぎ愛を紡ぐ奇跡~
ギュッと胸を押さえて肩をすくめたセシレーヌ…。
だめだ…このままじゃ、いつか国王様をもっと傷つけてしまう…。
私が消えなくてはだめだ!
グッと拳に力を込めたセシレーヌだったが…。
ふわりと、優しい腕に包み込まれてしまった。
「だめですよ、自分で消えようとしては。貴女は必要な人です」
「…でも…」
「もういいですよ、誰も貴女を責めたりしません。傷つけたりしませんから、自分の身を護るために魔力を使う事はありません」
ヨシヨシと、ジュニアールがセシレーヌの頭を撫でると。
スーッと頭から痛みが引いてゆくのが分かった。
「もしかして、先生が私を避けるのは何か理由があるのではありませんか? 」
理由…。
そっか…アノ事をハッキリと言ってしまえばいいんだ。
そうしたらきっと、私の事を死刑にしたくなるに違いないから。
「理由を知りたいの? 」
「はい、知りたいです。なぜ、そこまで避けれるのか」
一息ついて、セシレーヌはそっと胸に手を当てた。
「…聞けばきっと、私を死刑にしたくなるよ…」
「どうゆう事ですか? 」
「私は、あんたの大切な人の命を奪って生きているから…」
「え? 」
「あんたの奥さん、メイシス王妃は事故で脳死したんでしょう? 」
「はい、そうです」
「そして、ドナー登録をしていた為、必要な臓器は必要な人へ移植されたんだよね? 」
「その通りです」
「メイシス王妃の一番大切な心臓は、誰に移植されたのか聞いていない? 」
「いえ、そこまではお聞きしておりません」
「メイシス王妃の心臓は…私に移植されているよ…」
え? と、驚いた顔をしたジュニアールは暫く固まった表情をしていた。
ほらね。
大切な心臓を奪った私の事、憎くなっているよね?
「これで納得した? 私は…アンタの愛する人の命を奪って生きている。…アンタから言わせると、死刑にしたいくらい憎い存在だから…」
暫く、固まった表情を浮かべていたジュニアールだがそっと首を振った。
「いいえ…奪ってなんかいません」
え?
セシレーヌは耳を疑った。
茫然と固まっていたジュニアールが、ゆっくりと微笑みを浮かべた。