グリーンピアト物語~命を紡ぎ愛を紡ぐ奇跡~
それから数日後。
いつもと変わらずセシレーヌは仕事をしていた。
すると、待合室に話題のイディアの姿を見た。
病院に来ているのは、どこか悪いからだろうか? と、何気に気にかけていたが深くは考えなかった。
そのまま仕事に戻ったセシレーヌは、いつもと変わらないまま過ごしていた。
お昼休憩になり、売店でちょっとしたお握りと総菜を買ったセシレーヌは一息ついてゆっくりと食べようとしていた。
コンコン。
休憩室のドアをノックする小さな音に、ハッと手を止めたセシレーヌ。
静かにドアが開いて入って来たのは…
ミディスだった。
「お姉ちゃん、お久しぶり」
あどけない天使のような笑顔を向けて来たミディスに、セシレーヌはぎこちない笑みを浮かべた。
「はいこれ、お弁当」
ミディスが差し出したお弁当は、以前看護師が誰かから預かって来たと言ってセシレーヌに渡してくれたお弁当によく似ていた。
「お姉ちゃん。お医者様が栄養が偏ったり、食生活が乱れていたらいけないでしょう? 」
言いながらお弁当の蓋を開けてくれたミディス。
卵焼きや、赤いウインナー作ってあるタコさんウインナーや、小さいハンバーグとレタスとポテトサラダが添えてあるおかずに、セシレーヌは驚いていた。
そしてお握りが2つそえてあり、鮭とタラコが混ぜて作ってあった。
「コック長に教えてもらって、作ってみたの。遠慮しないで食べてね」
「これは、皇女様がお作りになられたのですか? 」
「うん。だって、お姉ちゃんには元気でいてもらいたいから。お医者さんは忙しくて、ご飯もしっかり食べられないって聞いたから。ゆっくり食べられる時は、しっかり食べてもらおうと思ったの」
そんな事まで考えてくれるなんて…。
お弁当を見ていると、ミディスの優しさが伝わって来たセシレーヌは胸がいっぱいになった。
「有難うございます、頂きます」
お弁当を食べ始めたセシレーヌを、ミディスは満面の笑みで見ていた。
卵焼きもちょうどいい味付けで、ウインナーも上手に焼けている。
野菜も新鮮で…こんなに美味しいものを食べるのは、久しぶりだとセシレーヌは思った。
「ねぇ、お姉ちゃん。お父さんの事、信じてあげてね」
食べ終わる事にミディスが言った。
「あのね、あの人。イディアって人なんだけど、お母さんとお父さんが結婚する前からずっと着きまとっていたってみんなが話していたの。お母さんが死んでしまってから、勝ってにお城に入って来たり、お父さんが変えてくるのを待ち伏せしていたりで大変だったの。お父さんが退院して来た時も、勝手にお城に入って来て待ち伏せしていたようなの」
「そうでしたか…」
「イディアって人、すごく怖くて近づきたくないの。前にね、お城に勝手に入った時。庭にいたウサギが、変な死に方していた事があったの。それを見てイディアって人、笑っていたのよ。気持ち悪かったわ」
なる程…世間で言うストーカーのような人なのだろうか?
セシレーヌはそう思っていた。