グリーンピアト物語~命を紡ぎ愛を紡ぐ奇跡~
その頃。
国立病院では、イディアの担当医師であるトワイヤルにクラウドルが詳しい事を聞いていた。
「僕は、患者様を診察しただけですよ。お相手が国王様だと、患者様が仰るのでそれを信じているだけです」
「なるほど…」
「実際に妊娠していらっしゃることは、間違いないので。本当に国王様の子供であるかどうかは詳しく調べて見なくては分からない事です」
クラウドルはイディアのカルテを見て、確かに妊娠している事は事実である事は確信した。
だがどこか疑わしく、あまりにもタイミングが良すぎる事で戸惑っていた。
いつものように仕事をしているセシレーヌ。
「セシレーヌ先生。お客様がいらっしゃっています」
看護師がセシレーヌの元にやって来た。
お客様って誰?
そう思いながらセシレーヌはロビーまで向かった。
今日は静かな病院のロビー。
1週間でも最も空いている曜日であり、患者の数も少ない。
そんな病院のロビーに、凛とした一人の紳士が立っていた。
白髪交じりの堀の深い顔立ちに、凛とした表情でインテリーっぽくメガネをかけていて、口元に髭を生やした生真面目そうな男性。
肌の色が白いと言うよりも青白い色に近く、スラっとした背の高さは推定180cm以上に見える。
ロビーで待っている紳士は、足音が聞こえてくるとスッと立ち上がった。
セシレーヌが白衣姿でやって来るんが見えると、口元に優しい笑みを浮かべ歩み寄って行った。
「セシレーヌ先生ですか? 」
紳士がセシレーヌに歩み寄って声をかけた。
「はい、そうですが貴方は? 」
姿勢よく立っている紳士を見て、セシレーヌはどこか見覚えがあるような気がした。
遠い昔によく見ていた顔に似ているような気がするが、ハッキリとは思い出せずじっと紳士を見ていた。
「初めまして。…ではありませんが、きっと私の事は忘れていると思うので」
いいながら紳士は胸ポケットから名刺を取り出して、セシレーヌに渡した。
紳士から渡された名刺には「セドリシア」と言う名前が書いてあり、北グリーンピアトの弁護士である事が記載されていた。
セドリシアの名前を見ると、確かに聞き覚えがあるとセシレーヌは思った。
ここ数年の間で、情報が乏しかった北グリーンピアトの情報が良く入ってくるようになった。
その情報の中で腕利きの弁護士セドリシアと言う者がいると、話題になっている。