グリーンピアト物語~命を紡ぎ愛を紡ぐ奇跡~

「あれ? あの船は、王室の船じゃない? 」
「ああ、王室専用の客船だな」
「どうして、こっちに向かっているの? 」

 王室の船と聞いて、セシリアはドキッとした。

 まさか…
 この船に乗っている事が分かったの?


 王室の客船が横付けになり、デッキがつけられた。

「ご乗船のお客様のご案内申し上げます。暫くこの船は、緊急停泊致します。ご迷惑をおかけしますが、ご了承下さい」

 アナウンスが流れ、乗船客は何事かとざわめき始めた。

 
「ご乗船の皆様、お騒がせして申し訳ございません」
 
 デッキを渡ってやって来たのは、白いスーツ姿で正装したジュニアールだった。
 
 突然現れたジュニアールに、乗船客達は驚くばかりで息を呑んでいた。

「この船に、大切な人が乗っていますので探しに参りました。お急ぎの所を、足止めして申し訳ございませんが。暫くの間、お待ち下さい」

 そう言ったジュニアールは辺りを見渡した。

 
 セシレーヌはセドリシアの背に隠れ、見つからないように身を潜めていた。

 特に一人一人を確認するわけでもなく、ジュニアールはゆっくりと歩いて来た。

 乗船客はただただ驚くばかりで、ジュニアールの様子を見守っていた。


 足音が近づいて来て、セシリアは見つからないようにと息を潜めていた。
 セドリシアもなるべく顔を見られないようにと、俯いていた。


 歩いていたジュニアールの足音が、セシリアとセドリシアの傍でゆっくりと止まった。

 肩を竦めて立っているセシリアの後姿を見ると、ジュニアールの目が潤んできた…。
「先生…探しましたよ…」
 声をかけられると、セシリアは観念したかのように一息ついた。

 ジュニアールはセシリアの傍に行くと、サッと片膝をついて深く頭を下げた。

 その姿に乗船客は驚き、何事かとざわついた…。

「この度は、私の配慮が足らなかった故に。先生の事を深く傷つける形になってしまいました。私の不甲斐なさを、どうかお許し下さい」

 ちょっと待って! なんでそうなるの?
 恐る恐るセシリアは振り向いた。

 片膝をついて深く頭を下げているジュニアールの姿を見ると、ズキンと胸に痛みを感じたセシリア。

 一国の国王が、こんなに大勢の人がいる前で頭を下げるなんて信じられない光景だ。
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