他の誰かのあなた
年を重ねるごとに、私の悪い癖はエスカレートしていった。
特に、色恋では、トラブルになることも多く、それが煩わしいから、バレないようにやることを学んだ。



私は、そんなに容姿が良い訳では無いと思うのだけど、誰かの男を取ろうとして失敗したことは一度もなかった。
だから、妙な自信を持っていた。
男を奪い取ることなんて、本当に簡単なことだ。
そのせいもあるのか、奪ってしまった後は、全く興味が持てなかった。
人のものだった時にはあんなに輝いて見えたのに…



もしかしたら、私には人を愛するということが出来ないのではないかと思うことさえあった。



大学生になった頃、布川という男と付き合った。
彼は、誰かのものというわけではなく、布川から声をかけて来て、なんとなく付き合っただけだったのだけど、布川とは気も合い、優しくされて、だんだん心地良くなってきた。
その時に自覚した。
私は布川を愛している、と。
私にも誰かを愛することが出来るんだとわかって、ホッとした。



おそらく、布川は結婚も考えていたのではないかと思う。
私も、それならそれで良いと思っていた。
< 12 / 52 >

この作品をシェア

pagetop