夜明けの天使たち
心の扉
「土橋さん、昨日求人のフリーペーパー持って帰ってたけど、何の仕事するの?」

「あ、その土橋さんっていうのも…アキラでいいよ」

これまでのクラスメイトは誰一人、アキラなんて呼ばなかったのに、何故かそう言ってしまった私が不思議だ。

「うん。アキラさん、やりたい仕事はあるの?」

「そうね…特にないかな。でも、心配しないで!まだ少しは貯金もあるし、ちゃんとすぐに何か見つけるから」

そう言った後、私は何だかとても恥ずかしくなり、少し俯いてしまった。

学歴もなければ、夢も目標もなく、ただ田舎から逃げるように都会へ飛び出してきただけなのだから…。

「私と違って、レイくんは立派だよね。働きながら大学に通うなんて、私にはとてもできない。尊敬する、ホント」

「そんな立派なものじゃないよ。大学に行くことにしたのも、有り体に言えば単なる見栄だし。その求人誌、ちょっと見ていい?」

「うん」
< 16 / 57 >

この作品をシェア

pagetop