夜明けの天使たち
「なんだか意外だな。アキラさん、洗練された美人さんだし、そんな田舎から来たとは思わなかった」

レイくんの言葉に思わず苦笑いしてしまう。

「私、母の着せ替え人形だったからね。母自身も高級な服しか着ないし、漁村に引っ越したばかりの頃、ハッキリ言われたこともある。他のダサい田舎娘たちとは違うってこと、見た目でわからせてやるから感謝しなさいよ!だって。まさにありがた迷惑。母は免許を持ってないから、毎週末、電車とバスを乗り継いで、県庁所在地まで行って、買い物三昧。往復4時間以上かかるのに、よくやるわ。私も時々、無理矢理一緒に行かされたのは苦痛でしかなかったし…」

「そっか…。お父さんは何も言わなかったんだ」

「黙認してたみたい。何しろ、会話のない仮面夫婦だからね。私…両親のことも、クラスメイトのことも、本当に嫌で仕方なかった。みんな、私を嫌ってたし。友達の一人もいなかったの」

「え?アキラさんが嫌われる理由がわからないんだけど」

「どうやら、一家全員嫌われてたみたい。父も母も、自分たちは他の村人とは違うんだってアピールが凄かったもの。私、最初のうちは他の子の雰囲気に合わせるようにしてたけど、そうすれば今度は、母からのキツい体罰が待ってるし…。安心できる場所も、信用できる人もいなかった。だから、アナログにも文通を始めて、美和子さんと知り合ったのよ」
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