夜明けの天使たち
誤算
まさに、勢いだけはよかったが…上京初日から、私は調子が狂っている。

夜行バスで田舎から出てきて、目覚めた朝に見た景色は確かに、これぞ東京!と言える大都会だった。

しかし、入居予定のマンションまでは、まだ遠い。

美和子さんが書いてくれた乗り換え案内の通り、都心から1時間、電車に揺られた。

その間、目に映る景色は、大都会からどんどん郊外らしくなっていくので、何だか心細くなる。

やっとのことで辿り着いた駅は、田舎の駅と大差ないほど小さかった。

とは言え、駅周辺には、生活に必要な店はほぼ揃っていたことと、物件も駅から徒歩2、3分というのが有難い。

徒歩圏内にひととおり揃っているなんて、あの田舎では、とても考えられない便利さである。

美和子さんから紹介された、私のルームメイトになる夏川黎さんは、既に着いているはずだ。

エレベーターを降り、402号室の前に着くと、呼吸を整え、手鏡を開くと、何度も練習してきた笑顔を最終確認。

私は、実家とも縁を切りたかった為、敢えて大学進学はしなかったが、夏川さんは、有名な大学に通う新聞奨学生なので、私とは違って、とても勤勉な女子大生なのだろう。

私のようなはみ出し者と、仲良くしてくれるかな…?

少し不安でもあったが、もう後戻りはできない。

勇気を出し、チャイムを鳴らす。
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