夜明けの天使たち
二人の黎明
互いの想いを知ってから、数時間後。

これが恋愛映画なら、今頃私たちは、身も心も結ばれていたところかもしれない。

しかし、不器用すぎる私たちは、キスのひとつさえ出来ず、いつものように小さなテーブルを挟んで、ひたすら語り合っていた。

ただ、いつもと違うのは、互いにずっと手だけは重ねたままで。

これまでも沢山、語り合ってはきたけれど、互いに恋心は隠していたから、まるで小さな疑問をひとつひとつ、答え合わせをするかのように。

例えば…。

本当は、新聞奨学生には寮があてがわれるけれど、レイくんは、初めて腹を割って語り合ったあの日から、ずっと私と一緒に居たいと思ったそうで、敢えてそのことは言わなかったらしい。

そして、いつも寄り道もせずに帰宅するのも、休日はいつもマンションに居るのも、体力温存は建前で、少しでも私と居たかったからだという。

全く知らなかった…。


それに、レイくんをほんの一瞬でも疑って申し訳なかったけれど、彼はこの部屋に女の人を連れ込んだことなど、あるわけがないとのこと。

「でも、美人と一緒なのを同級生に見られたのは、事実なんだ」

その言葉に、つい膨れてしまうが、レイくんはクスクス笑っている。

「そんな膨れっ面しないでよ。その美人の正体、アキラさんに決まってるじゃん」

「え?それはあり得ないでしょ!?美人じゃないんだから…」

「あり得る。むしろ、他の人っていうのがあり得ないから。だって、夜にコンビニから一緒に帰るところを見られたんだよ?前から不思議だったんだけど、本当に自分が美人だってことに気付いてないの?」
< 53 / 57 >

この作品をシェア

pagetop