いちごみたいに甘酸っぱい君のアイ 〜序章〜
もう見たくない
こんな過去があったから、俺は痛みに堪えて笑う紗綾さんや、陽雅を見たくない。
陽雅だって、アノコトがあったから、なおさら。
紗綾さんは不思議な人だ。
お姫様という言葉がしっくりくるほど愛らしいのに、どこか勇ましい。
自分の身を顧みず、他の人のために全力を尽くす。
そんな紗綾さんだから、陽雅との交際だってなにも思わなかった。
むしろ当然だと思った。
あの二人は幸せになれる。
お似合いな二人だったから。
でも、そんな二人を引き裂いたのは、忘れもしない。憎き、影沢組。
毒花のことなんてなんとも思わなかった。No.2とは言えど、所詮は雑魚だったから。
でも、でも……あの幸せになるべき二人を引き裂いた影沢組だけは許せなかった。
苦しい過去によって形成された紗綾さんは、二度と悲しんでほしくなかった。
泣き叫び、感情を隠すようになったことのある陽雅には、二度と悲しんでほしくなかった。