真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛


「……あのね、一悟くん」


 羽入さんが、制服の袖をくいと引いた。


 俺の色眼鏡かもしれないけど、どこか寂しそう……な気がする。


 ドク、ドク、ドク。


 心臓が早鐘を打ち出す。


 羽入さんも、俺と同じ気持ちなのか……?


 俺と別れるのが寂しいって、思ってくれてる……?


 期待が高まっていくのと同時に、視界が羽入さんだけに狭まっていく。


 目の前に感じるくらい、羽入さんしか見えなくなって。


 彼女の湿った唇が開いていくのをスローモーションのように見届ける……


「もしよかったら、もうちょっと……」


「――――羽入めるさん!」


 しかしそんな時間は長く続かなかった。


 誰かが、俺達の世界を妨害してきたのだ。


 羽入さんの名前を呼んだということは、彼女の知り合いなのだろう。不快な気持ちを抑えて、声の主に目を向ける。


 それは、俺達と同じ制服を着た男子だった。


 走ってきたのだろう、肩を上下させて、熱い瞳で羽入さんを見つめている。


 俺は直感的に察する。彼はライバルだ。


 だけど……誰なんだ?


「えっと~……誰だっけ?」


 えっ、羽入さんも?


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