円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
 ある時代の、のちに国王となる王子は鑑定結果が「牛飼い」だったらしい。
 彼はそれを誰にも口外せず、思い悩んだまま自分の胸にしまって国王の座を継いだのだが、牛の飼育に関して「放牧」という方法を用いると乳も肉も品質が向上するということを突き止め、これによってこの国の牛は諸外国に高く売れるブランド牛となったことや、国民の食生活が豊かになったことで名君と称賛されるようになった。

 そうなって初めてこの国王陛下は、過去の笑い話として「高等学院の入学鑑定は牛飼いという結果だった」と公表したんだとか。


 この鑑定制度のおもしろいところは、初等学院卒業時に学院長の推薦を受けられなかった平民の生徒たちにも鑑定を受けられるチャンスがあるという点かもしれない。
 その鑑定結果がユニークなものだったり、これはと認められた場合は、鑑定士から高等学院への進学をすすめられるらしい。


 鑑定結果は本人にだけ口頭で伝えられる。
 それは結果のみで、理由や意味は一切説明してもらえない。

 結果を聞いて戻ってくる生徒の表情は悲喜こもごもだった。
 大声で「やった!俺も魔術師になれる!」と喜んでいる生徒もいれば、「コンドルってなんだよ。それ職業か?そもそも人間じゃないよな?」と呆然としている生徒もいた。

 コンドル…たしかに彼の10年後が気になる鑑定だ。


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