円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
お兄様たちにさっそく報告しなくっちゃ!
喜んでもらえるかしら。
それとも羨まれるかな!?
そんなことを考えながら足取り軽く学院の廊下を歩いていると、レイナード様と、ご学友のカインが向こうから歩いて来るのが見えた。
わたしの姿に気づいたレイナード様が笑顔で手を振ってくれている。
「レイナード様、鑑定はお済みになりまして?」
「ああ、今終わったところだよ。シア、何だか嬉しそうだね、いい結果が出たの?」
言ってしまいたい。
言ってもいいのかな?
思わず「んふふっ」と笑った後で、レイナード様がじっとわたしの顔を見ていることに気づいて、表情を正した。
危ない危ない、いくら学院内でも無礼講でも、わたしは王太子殿下の婚約者であることを忘れてはならないと、お妃教育の先生たちに、何の呪文だ?ってほどに言われ続けたのだ。
「こっちで話そうか、シア」
レイナード様はわたしの手を引いて中庭へ行き、ふたり並んでベンチに座った。
カインはベンチには座らずに隣に立っている。
「俺、鑑定で宰相って言われたんだよ」
カインはどこか複雑そうな表情で笑っている。
「あら、最高の結果ではありませんか」
カイン・ルーカスは筆頭公爵家の長男で、父親は現在国王陛下の宰相をしている。
レイナード様と「ご学友」になったのも偶然ではないだろう。
そしてゆくゆくは、国王となるレイナード様の片腕となることが保証されたのだ。
こんな喜ばしいことはないと思うのだけれど?
小首をかしげるわたしに、カインはさらに苦笑して続けた。
「だってさ、一生レイナードとべったりってことだろう?ちょっと濃すぎるっていうか、覚悟が必要っていうか」
カインはとても気さくな性格で、自分の身分を笠に着ることもしないし、誰に対しても平等な態度で接している。
少々軽いな、と思うこともあるけれど、きっとそのほうが本音を吐き出しやすい頼れる側近になるだろう。
「どういう意味だ。いいじゃないか『宰相』なんて、なかなか聞かない鑑定だ」
レイナード様がそう言うと、カインは上半身を傾けて親し気にレイナード様の肩に手を回した。
「レイナードの鑑定結果なんてもっと聞いたことないけど?というか、もしもほかにも同じ結果をもらっているヤツがいたら権力争いが勃発するだろうな」
「まあ、差し支えなければ、結果を教えていただいても?」
「王子だ」
レイナード様がボソっと言った。
ええ、あなたはレイナード王子ですよ、知ってます。
そう思いながら「え?」と返すと、もう少し大きい声で言い直してくれた。
「鑑定結果が『王子様』だったんだ。そんな職業あるのか?」
あははっ!と大口を開けて笑いそうになるのを、奥歯をぐっと噛みしめてこらえた。
「まあ、素敵」
若干声が震えてしまったのは許してほしい。
「ステーシアちゃん笑っていいんだよ?まんますぎてウケるだろう?」
「おい、俺の婚約者を馴れ馴れしく『ちゃん』づけで呼ぶんじゃない!」
「何言ってんだよ、無礼講だろう?」
微笑ましい二人のやりとりに、ついに我慢できなくなって「あははっ」と声と立てて笑ったのだった。
喜んでもらえるかしら。
それとも羨まれるかな!?
そんなことを考えながら足取り軽く学院の廊下を歩いていると、レイナード様と、ご学友のカインが向こうから歩いて来るのが見えた。
わたしの姿に気づいたレイナード様が笑顔で手を振ってくれている。
「レイナード様、鑑定はお済みになりまして?」
「ああ、今終わったところだよ。シア、何だか嬉しそうだね、いい結果が出たの?」
言ってしまいたい。
言ってもいいのかな?
思わず「んふふっ」と笑った後で、レイナード様がじっとわたしの顔を見ていることに気づいて、表情を正した。
危ない危ない、いくら学院内でも無礼講でも、わたしは王太子殿下の婚約者であることを忘れてはならないと、お妃教育の先生たちに、何の呪文だ?ってほどに言われ続けたのだ。
「こっちで話そうか、シア」
レイナード様はわたしの手を引いて中庭へ行き、ふたり並んでベンチに座った。
カインはベンチには座らずに隣に立っている。
「俺、鑑定で宰相って言われたんだよ」
カインはどこか複雑そうな表情で笑っている。
「あら、最高の結果ではありませんか」
カイン・ルーカスは筆頭公爵家の長男で、父親は現在国王陛下の宰相をしている。
レイナード様と「ご学友」になったのも偶然ではないだろう。
そしてゆくゆくは、国王となるレイナード様の片腕となることが保証されたのだ。
こんな喜ばしいことはないと思うのだけれど?
小首をかしげるわたしに、カインはさらに苦笑して続けた。
「だってさ、一生レイナードとべったりってことだろう?ちょっと濃すぎるっていうか、覚悟が必要っていうか」
カインはとても気さくな性格で、自分の身分を笠に着ることもしないし、誰に対しても平等な態度で接している。
少々軽いな、と思うこともあるけれど、きっとそのほうが本音を吐き出しやすい頼れる側近になるだろう。
「どういう意味だ。いいじゃないか『宰相』なんて、なかなか聞かない鑑定だ」
レイナード様がそう言うと、カインは上半身を傾けて親し気にレイナード様の肩に手を回した。
「レイナードの鑑定結果なんてもっと聞いたことないけど?というか、もしもほかにも同じ結果をもらっているヤツがいたら権力争いが勃発するだろうな」
「まあ、差し支えなければ、結果を教えていただいても?」
「王子だ」
レイナード様がボソっと言った。
ええ、あなたはレイナード王子ですよ、知ってます。
そう思いながら「え?」と返すと、もう少し大きい声で言い直してくれた。
「鑑定結果が『王子様』だったんだ。そんな職業あるのか?」
あははっ!と大口を開けて笑いそうになるのを、奥歯をぐっと噛みしめてこらえた。
「まあ、素敵」
若干声が震えてしまったのは許してほしい。
「ステーシアちゃん笑っていいんだよ?まんますぎてウケるだろう?」
「おい、俺の婚約者を馴れ馴れしく『ちゃん』づけで呼ぶんじゃない!」
「何言ってんだよ、無礼講だろう?」
微笑ましい二人のやりとりに、ついに我慢できなくなって「あははっ」と声と立てて笑ったのだった。