婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「わたくし、朝の現場の安全確認へ行ってまいります」
 今日はリューディアが担当だった。

「あ、今日は僕も担当です。リディアさん、一緒に向かいます」

「はい。エリックさん、よろしくお願いします」
 リューディアはエリックと共に事務所を出て、採掘現場の方へと向かった。だが、どこかエリックの態度がおかしいようだ。そわそわとしているような、わくわくとしているような。それに気付いたのはエメレンス。だが彼は今、この事務所を片付けるのが仕事であるため、リューディアとエリックが二人で並んで現場へ行く後姿を、うらめしそうに見つめることしかできなかった。

「いやはや、それにしても。事務所があんなになっていて、びっくりしましたよ」

「本当ですよね。お兄さまのことですから、施錠も侵入防止魔法もしっかりかけていたと思うのですが。近頃の盗人というのは、それすら破ってしまうような能力(ちから)を持ち合わせているのですね。物騒な世の中になりましたね……」

「そうですね。こんな身近にいるのであれば、リディアさんも気を付けなければなりませんね」
 そう答えるエリックを、リューディアは眼鏡の隙間からチラリと覗いた。エリックの様子がいつもと違うことに、リューディアはなんとなく気付いた。少し、浮かれているように見える。

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